宇宙論における「人間原理」(Anthropic Princip1e) という概念があります。
「自然界(宇宙)の物理法則は 知的生命(人間)の発生を許容するようなものでなければならない」というもので、
「生物学から物理学を導くこと」だったり、
「“人間が居るというデータ”から“物理法則”を出すこと」、
「われわれの存在を元にして宇宙の因果的連鎖をたどること」
などとも説明されます。

宇宙は基本的に物理法則に支配されている訳ですが、
その法則は定数、あるいはパラメータと呼ばれる数値によって表されます。
これらの数値は所与のもので、実験や観測で導き出すしかありません。
理由などなくその値として存在したのです。
結果として、宇宙が生まれ、銀河、太陽系、地球、生命誕生が続いたのです。
それらの値の決定が偶然だったかどうかは分かりませんが、
生命誕生のために最初から計算され尽くされた値として存在したのです。
そんな物理定数や宇宙を規定する値が数十個あるそうです。

  • Speed of light in vacuum : C = 299792458m/s
  • Gravitational constant : G = 6.67408×10-11 m3 kg-1 s-2
  • Planck constant : h = 6.62607015×10−34 m2 kg s-1
  • Planck scale : tP = 5.39125×10−43 s, ℓP = 1.161625×10−35 m, mp = 2.17644×10−8 kg
  • Elementary charge : e = 1.602176634×10−19 A・s
  • ( Weak force ) Fermi constant : GF = 1.43585×10-62 kg m5 s-2
  • Strong force : αs ( mZ ) = 0.118
  • me = 9.1093835×10-31 kg, mp = 1.67262190×10-27 kg, mn = 1.67492747×10-27 kg
  • Hubble constant : H0 = 67.7 km s-1 Mpc-1
  • Space density : Ω0 = 0.311
  • Cosmological constant : Λ = 1.109×10-52 m-2
  • Initial fluctuation : As = 2.11×10-9

一部をざっと挙げてみましたが、
これらは生命誕生に極めて都合の良い値になっています。
逆に言うと、これらの定数のひとつでもかけ離れた値になっていたなら
今の私たち人間は存在し得なかったし、
このような宇宙の存在や微調整問題自体も知られることもなかったのです。

具体例で見てみましょう。
me = 9.1093835×10-31 kg, mp = 1.67262190×10-27 kg, mn = 1.67492747×10-27 kg
それぞれ電子、陽子、中性子の質量を表します。
陽子と中性子の質量がほぼ同じで、
電子の質量の2.5倍分だけ中性子が陽子より重いのです。
中性子が自然に電子とニュートリノを放出して陽子に転ずるというベータ崩壊も
中性子と陽子が同じ重さであれば起こりません。
また、陽子や中性子は電子の1840倍の質量があります。
圧倒的な差です。
電子が極端に軽いことによって空間的広がりを持って原子核の周りを回ることが出来ます。
そうすることで、原子核が固定され、原子自体が安定化するのです。
生物進化にとって重要なDNAの2重らせん構造の安定化にも寄与しているのです。

生命にとって不可欠な元素である水素、酸素、炭素、窒素の誕生も
そうした絶妙な値の調整によってもたらされました。

このように適切な定数を持つ宇宙が
全くの偶然に誕生するのには
想像を絶する試行錯誤を経た微調整が成されなければなりません。
ノーベル物理学賞受賞のロジャー・ ペンロース博士は、
われわれの宇宙は1010の123乗の可能な宇宙のうちのひとつであると試算しています。
この宇宙の誕生は、1010の123乗分の1の確率だというのです。
1010の123乗という数字がどれほどのスケールであるかを実感できないと思います。
例えば、宇宙の分子一個にゼロをひとつずつ書いていった場合、
可視の宇宙全体の分子の数でもまだ足りないそうです。
あり得ない程の小さな確率の奇跡の上に私たちの住む宇宙が誕生していたのです。

どうしてこんな奇跡が起きたのでしょう。
宇宙創成の前にそれらの値は決定されていなければなりません。
微調整問題がクリアされたからこそ、この宇宙が誕生したのです。
この謎に挑み続ける科学者たちの中には、
超自然の理性が働いたとしか考えられないという意見が多いようです。
何者かが、物理や化学、生物学 の世界を宇宙誕生の前にいじくったということです。
その超自然の理性は、故 村上和雄氏の言葉を拝借すればサムシング・グレートであり、
宗教者に言わせれば神ということになるのでしょう。

一方、もう一つの解も提示されています。
多元宇宙論(以下、マルチバース論)です。
私たちの住んでいる宇宙は唯一無二ではなく、いろいろなパラメータをバラバラに持った宇宙が無数に存在しているという説です。
私からすれば、「それを言っちゃ、おしまいよ」という感じです。
というのは、我々が観察することの出来ない別の宇宙を想定してしまえば、
それが存在しないとも証明できなくなりますから
問いが止まってしまいます。
煙に巻かれた感が払拭できず、どうにも納得いきません。
私は、マルチバース論は間違っていると確信しています。

多くの人はこの2択しか解を持っていなかったのですが、
ある人が第三の説を唱えました。
「メタバース論」です。
ゼロポイント・フィールド仮説に直結する概念です。
そして、その提唱者は、ワールドシフトの提唱者としてこのメルマガでも紹介した
アーヴィン・ラズロ博士です。

86. WorldShift Kyoto Forum 2018

幼少のピアニストとして出発し、その後、物理学者、哲学者となり、
ノーベル平和賞候補にもなった文字通りの天才です。
彼の唱える「メタバース論」こそ、真理だと思っています。

「メタバース論」については、またの機会に詳しく解説することにします。
乞うご期待!

(2021年7月14日)

コメントする