ここ数週間のこのメルマガのテーマには、
心的資本が通底しています。
また、数日来、リーダー論を語るセミナー講師を拝命して
スライド作成にも注力していました。
そんな折、JAL再建を成し遂げた稲盛和夫氏のことを思い出しました。
第164話で紹介した『心。』は心的資本そのものです。
http://tunagaru.org/akiyama-essay/164
稲盛さんは心的価値を深く理解され、実践されてきた方です。
JALの再建も社員全員の心に働きかけ、
全員にリーダーの自覚を持たせたから可能になったのだと思います。
世に少なからぬマネジャーはいても
リーダーは皆無といって良いでしょう。
御自身がリーダーであるだけでなく、
周りの社員をもリーダーにしてしまうところが稲盛さんの凄い所です。
それは紛れも無く、心的資源の活かし方をご存知だったからに違いありません。
ここで稲盛さんの持論である成功方程式について解説します。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
至ってシンプルです。
「何だ、当たり前じゃないか」と思う方も多いかもしれません。
真理というものは実はシンプルなものです。
稲盛さんが人生を掛けて導き出したこの方程式は、まさしく真理だと思います。
人生や仕事における結果は、個人の能力に関わることは間違いありません。
しかし、それだけで決まってしまうものではありません。
結果を大きく変えてしまうのは能力以上に熱意であるというのが
稲盛さんが最も強調したい点ではないでしょうか?
私たちは、成果が出ないのは能力のせいにして(言い訳をして)
日々の努力を怠ってしまいがちです。
その誤りを稲盛さんは鋭く指摘しているのです。
私が稲盛さんに抱くイメージは、情熱そのものです。
今でこそ、温和な雰囲気ですが、
その情熱は火よりも熱いと感じます。
直接お会いしたことがないのは勿論なのですが、
常軌を逸した情熱家であることは間違いありません。
先の成功方程式の3項目のうち、
「熱意」「方向性」「能力」の順で大切なのだと思います。
アリストテレスが諸活動の源として挙げた「知」「情」「意」とも整合するようです。
この場合、「知」が「能力」に、「情」が「方向性」に、「意」が「熱意」に該当するのだと思います。
私自身、「知」や「能力」の身の程をわきまえているので、
大事を為すために「意」や「熱意」を最大活用すべきと心積もりしています。
「知行合一」の精神で精進するつもりです。
もちろん、人情の機微やコモン・センスを理解し、
世の中にとって正しい「方向性」を維持することを忘れてはならないと思っています。
そんなことを考えていると、
これからの社会にとって、心的資源が如何に重要であるかを思い知らされます。
第268話で、マネジメントの世界が
テーラーシステムから「心の資本」に依拠したシステムに移行していくことを書きました。
これからは心のマネジメントが求められるようになるでしょう。
目に見えない心が見えていて、それに正しく処することが求められるようになるのです。
(それが出来る人を私はプロフェッショナルと定義しています)
冒頭で某マネジメントセミナー講師を拝命したと書きました。
そのセミナーは3回シリーズで既に第1夜が終了しています。
https://peatix.com/event/3115755
第3夜が終了する際には、
リーダーとマネジャーが似て非なるものである点を理解し、
一人ひとりがリーダーになるとの気概を持っていただきたいと目論んでいます。
(実は、これは相当に難しいことなのですが・・・)
リーダーとマネジャーとの違い
皆さんはどう思われますか?
私は、心のマネジメントができるかどうかの違いだと思っています。
ここで断っておきますが、
その手法が操作主義であってはいけません。
共感共鳴といった正しい心への働きかけをすることが大前提です。
それには、先の成功方程式のうち、
「熱意」と「方向性」が極めて重要であると思います。
成功を導くリーダーにおいては、
「能力」よりも「熱意」と「方向性」がはるかに重要なのです。
最後に稲盛さんのあるエピソードを紹介します。
稲盛さんの若かりし日の出来事です。
京都の町を歩いていた際、デパートの壁に
紳士服新春バーゲンの大きな垂れ幕が下がっていたそうです。
稲盛さんがそれをちらりと見た後に同行していた社員につぶやきました。
「俺は馬鹿だ。バーゲンの垂れ幕を見てしまった。仕事に集中していない。恥ずかしい」と。
この境涯にして、はじめて本物のリーダーといえるのでしょう。
(2022年2月9日)