3年前から新しいチーム医療を稼働させています。
“排便サポートチーム”です。
5/20、21に開催される
第31回創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会のハンズオンセミナーで
当院の取り組みを詳しく紹介します(なんと90分!)。
90分は長過ぎますので、
今回はその要約を書いてみたいと思います。
まずは紹介動画をご覧ください。
排便、特に便秘の問題は生活の質を大きく左右する要因の一つです。
それどころか、生命予後にも関与することがわかっています。
下記は慢性便秘症状と生命予後の関係を示したグラフです。
1988~1993年に米国ミネソタ州の20歳以上の3,933例を対象とし,
2008年までの生存状況を行政の死亡記録によって確認したものです。
15〜20年の追跡調査で、
慢性便秘症状の有無による生存率の差異を検討しています。
結果は
慢性便秘がない群(青の実線)に比べ、
慢性便秘を有する群(青の点線)が下回っていました。
慢性便秘症の人はどうやら寿命が短くなってしまうようなのです。
便秘も放置してはいけないということになります。
そんな便秘の有症率を見てみましょう。
60歳未満までは女性が有意に多く、4%以下で推移しています。
それが60歳を超える頃から男女共に増加してきます。
シニア層での男性の便秘の有症率が高くなっていき、
80歳以上では男女比が逆転しています。
若い頃に便秘がないからといって油断してはいけません。
超高齢社会において増加の一途を辿るシニアの方々の
便秘問題の解決は、個人レベルのみならず社会全体においても意義がありそうです。
しかしながら、排便管理に関しては長らく進歩がなかったことも事実です。
従来の方法では解決できずに残っている問題を
Old & New Problem
と言いますが、
排便管理は、この“古くて新しい問題” なのです。
ドイツの法哲学者のゲオルグ・ヘーゲルは
「事物は螺旋状に発展する」と言いました。
螺旋は上から見ると
同じ平面上を回っているだけで進歩していないように見えます。
それを横から眺めてみると
実は一段上がっていることがわかります。
排便管理の問題はまさにそうです。
多くの医療従事者は、相変わらず刺激性下剤を乱用するだけで
排便管理に関する有効な手立てがないと感じていることでしょう。
しかし、医療は常に進歩しています。
排便管理も同じです。実は螺旋状に進歩しているのです。
私たちは大きく3つの画期があったと考えています。
特に3番目の便のエコー診断が
私たちのチームの排便管理を科学に押し上げてくれました。
当院の佐野由美 臨床検査技師が考案した経臀裂アプローチ法は極めて有効です。
関心をお持ちの方はこちらをご覧ください。
当チームによって排便管理の問題が全て解決できたわけではありません。
むしろ様々な問題が見えるようになって
本番はこれからだという気がしています。
今後も臨床経験を積み重ね、さらに分析を精緻にしていくことで
日常的な排便管理に活かせるようなエビデンスを構築していきたいと考えています。
これから様々な局面で
この排便サポートチームを紹介していきますので
どうぞ暖かく見守ってください。
よろしくお願いします。
P.S. こちらもお楽しみください。
(2022年5月18日)