2022年5月24日に松戸市で
かの藤原和博さんの講演会がありました。
松戸市には市役所主導による「まつど地域活躍塾」という
市民の地域活動を支援する常設の施設がありまして
その主催で開催された講演会です。
ちなみに「まつど地域活躍塾」では何と、
8ヶ月間の重厚なプログラムが用意されていて
手取り足取りで、地域で活躍するためのノウハウが伝授されます。
というと敷居が高いと感じるかもしれませんが、
松戸に転居して来て
松戸のことをより知るために参加したという方も多いようです。
こんな形で市民活動を活性化させている松戸市は素晴らしいと思いました。
講演会に話を戻します。
会場参加は既に満席でしたので
YouTubeでの視聴になりました。
オンラインで参加できるのは大変ありがたいですね。
テーマは「人生100年時代の人生設計と幸福について」でした。
藤原さんはリクルートの初代フェローで
民間人初の公立中学校長になられた事でも有名です。
最近ではその容姿から
「教育界のさだまさし」とも言われているそうです。
今後、ますます高齢化が進む日本社会にあって、
私たち個々人にとって大変示唆に富む内容でした。
最初に、今の社会の最大の変化はAIとロボット化であると断言されました。
未来社会においては半分以上の仕事が無くなることが説明されました。
無くならない仕事は何かを考え、
子どもたちにはそのような仕事を薦めていかなければなりません。
藤原さんによれば、私たちの仕事の能力は
①情報処理力
②情報編集力
③基礎的人間力
の3つに分類できるといいます。
これまでの多くの仕事が
①の情報処理力でこなすことができました。
しかしながら、そうした仕事は
AIとロボットがゴッソリと奪っていきます。
これから大切なのは②、③なのです。
講演の最中、藤原さんの得意なワークショップがいくつか用意されていました。
情報処理のワークショップはスムーズにできても
情報編集ではうまくできないことを多くの方が実体験されました。
前者が正解を導くための能力であるのに対して
後者は答えの無い、あるいは答えが簡単には見つけられない問いに対して
たくさんの仮説を出して、より納得感のある答えを見出す能力です。
情報編集力こそ日本の教育に欠落していた能力で、
藤原さんの教育改革の重点がそこにあるようです。
普段の私たちの思考は情報処理に極端に偏っているのですが、
それを情報編集にシフトさせるにはある種のコツがいるそうです。
藤原さんならではの表現を借りれば、
「敢えて馬鹿なことを言って、脳をガチャっと切り替える」のだそうです。
「ガチャ」という表現がいいですね。わかる気がします。
結局、基礎的人間力と情報編集力はこれからの社会でも求められるのです。
先の3つの能力の上位に「コミュニケーション能力」が位置付けられるそうです。
コミュニケーション能力を鍛える上で重要なのは人間関係です。
当たり前のことかもしれませんが…。
一般的な人間関係の理解はタテとヨコの関係だと思います。
タテは家庭内での親子や学校での先生と生徒、会社での上司、部下の関係です。
ヨコは友人関係が代表的です。
そんなタテ、ヨコの人間関係だけでは
本物のコミュニケーション能力は養われないといいます。
これも藤原さんらしい表現ですが、
「ナナメの関係を重視せよ」とのことです。
ちょっと関係性の薄い第3者との関係の中で
鍛えられるべきなのです。
子供の場合、近所のおじちゃん、おばちゃんと
良好な関係性を結べることが大切なのです。
このナナメは、住宅で言うところの「筋交い」に該当し、
住宅を頑丈にさせるように
コミュニケーション能力を強固にさせます。
(タテ:柱 ヨコ:はり、ナナメ:筋交い)
今の日本は「ナナメの関係欠乏症」なのだそうです。なるほど、納得です。
AI、ロボット社会で重要視されるのは
情報編集力、基礎人間力、コミュニケーション力ということになります。
そうした能力は実は地域社会でこそ鍛えられるといいます。
そこには老若男女、あらゆる関係性を持った人間が集まるからです。
人生100年時代の幸福は、地域づくりの中に発見できるのだと教えられました。
第2部は「地域とつながる人生のススメ」と題して
地域づくりの事例紹介がありました。
地域活動に関わることの必然性ややりがいについて
具体的に語られました。
地域には多くの市民が活躍する場があることを再認識しました。
藤原さんの基調講演と事例紹介を受けて
実際に地域デビューを果たす人が出てくれることを祈っています。
私も医療プロボノ、医歩などの活動を通して
地域づくりに寄与したいと思いました。
皆さんも地域デビューしてみてはいかがでしょう?
(2022年5月25日)