冒頭の写真は、2003年10月24日、JFK国際空港でのラスト・フライトのコンコルドです。
イギリスとフランスが共同開発したコンコルドは、最初で唯一の超音速旅客機で
1976年に就航し、合計14機が
ブリティッシュ・エアウェイズとエール・フランスで使われました。
超音速の名前通り、マッハ2.02の速度で
パリ−ニューヨークを約3時間で飛行することができました。
航空技術の粋を集めた傑作だったのです。
ところが、そもそもこのコンコルドには、
燃費の悪さや収容定員の問題があり、採算が取れないことが開発段階からわかっていました。
そこで開発を中止すればいいのですが、
すでに多額の投資をしていたためにそのまま開発を続行して就航し、
膨大な赤字が累積され、最終的に27年で幕を閉じることになりました。
ちなみに、製造されたのはプロトタイプを含めて、わずか20機でした。
導入した航空会社もエール・フランスとブリティッシュ・エアウェイズの2社のみでした。
この時の現象は、サンクコスト効果によるものと説明されています。
サンクコスト効果とは、
すでに使った費用やコストに対して「もったいない」という心理が働き、
合理的な判断ができなくなってしまう現象のことを指します。
「サンクコストの罠」という表現が用いられることもあります。
そもそものサンクコスト(sunk costs)とは、
将来的に回収できる見込みのないコストのことです。
「沈む」の英語:sinkの過去分詞であるsunkが語源です。
日本語では、「埋没費用」や「過去コスト」とも呼ばれたりしています。
では次の問題を考えてみましょう。
「老朽化している病院を、いったん壊して新たに建て直すべきかどうか。病院のリフォームには、ゼロから建てるのと同じくらいのコストがかかるとする。」
リフォーム派の人は、古い病院を建てる際に高いコストがかかっていると主張するでしょう。
一方、新病院建設派の人は、リフォームでは不可能な新しい設備の導入ができると主張するかもしれません。
どちらにも一理がありそうです。
あなたは、どちらに賛同するでしょうか?
高いコストをかけて建てた病院をただ壊すのはもったいないと考えている人は、
「サンクコストの罠」にはまっているのかもしれません。
古い病院の建設費はすでに支払い済みで、
元に戻すことができないものだからです。
答えはケースバイケースかもしれませんが、
「サンクコストの罠」に陥らないように注意すべきであることは間違いありません。
こうした罠に陥りやすい心理状態を挙げてみます。
- 損失回避:行動経済学では、人が5万円もらう喜びよりも、5万円失う悲しさのほうが上回るとされています。そのため「損をしたくない」という心理が強くなってしまうのです。
- 非現実的楽観主義:確証もないまま「自分の判断は失敗しない」と考える心理が、問題が発生していても「最終的にはうまくいくはず」という根拠のない思考を生み出してしまいます。
- 自己責任の意識:案件の当事者であれば責任を重く受け止め、損切り、撤退の決断から遠のいてしまいます。
皆さん、どうでしょう? 心当たりはありませんか?
私は大きく頷いています。
そんな「サンクコスト効果」「サンクコストの罠」への対処法としては、
まず、その存在をしっかりと認識することが大切なのだと思います。
その上で、冷静に現実を見つめるべきです。
冷静になれないためにそのような状況に陥っている訳ですから、
第三者の助言が受けられる状態にしておくことも重要です。
そこまで出来たとしても
いざ、中止や撤退を決断するには
もう一段上の腹極めが必要なようです。
私自身も、
そろそろ決断をしていかなければならないと思う、今日この頃です(汗)。
皆さんは、いかがでしょう?
(2022年12月14日)