お取り寄せワインはこうして選べ!(後編)

Story 32

>> 前編はこちらから

ワインを選ぶポイントその2

ワインと一緒に食べる物を決める

ワインは、料理と合わせることで、何倍も味わいが広がります。これをマリアージュといいます。以前の回でもご紹介させていただきましたね。
ですので、通販サイトでワインを買う際も、どんな料理と合わせたら美味しいのかを考えながら選ぶと楽しみが倍増します。

野菜中心のメニューにオススメなのが、ソーヴィニヨン・ブランというブドウを使ったワインです。フランスの名門が経営するチリのワイナリー、ロス・ヴァスコスのソーヴィニヨン・ブラン は、お手頃価格ながら、1本何千円かのフランスの本格派ワインを彷彿とさせる味わいで、びっくりするほどお買い得です。
グラタンやクリーム煮など、ホワイトソースを使ったメニューや、バターソテーなどと相性がいいのが、樽の香りのするシャルドネです。あまり教えたくないのですが…、フランスの5千円以上のワインに匹敵するくらいトロッと濃厚な風味を味わえるのが、カレラのジョシュ・ジェンセン・セレクション です。ついついリピートしてしまう人も少なくないはずです。

左から、ロス・ヴァスコスのソーヴィニヨン・ブラン、カレラのジョシュ・ジェンセン・セレクションのシャルドネ
左から、ロス・ヴァスコスのソーヴィニヨン・ブラン、カレラのジョシュ・ジェンセン・セレクションのシャルドネ

ここで、シャルドネのワインを選ぶときにご注意いただきたいことがあります。「フルーティーとか、トロピカル・フルーツのアロマという甘い言葉にだまされるな!」です。パイナップルとか、マンゴーといったトロピカル・フルーツのアロマがあると書かれると、これは熟した葡萄から作られた味わいのあるワインだと思いがちですが、実際に購入してみると、ありふれた普通のワインということが少なくありません。コメントとあまりにかけ離れた風味だったために、ショップのソムリエに、「本当にテイスティングして、コメント書いてます??」と質問したことがありますが、満足いく答えは帰ってきませんでした。通販サイトのお買い得ワインのコメントをみると、そうした、いかにもテキトーなものが少なくありません…。「どうせ誰も文句いわないよ。」、「安いワインを売り切ってしまえばいい。」、そんな悪意すら感じるものもあります。要注意です。
ショップのコメントを見る際、コメントがあまりに長い、コメントが大げさなショップも要注意です。また逆に、まったくコメントが書いていない場合は、品揃えにまったくこだわりがない残念なショップかもしれません…。慎重に見極めたいですね。

ワインを選ぶポイントその3

珍しい地域を狙ってみる

ここからがワタクシのホンネです。どうせお取り寄せするのですから、ふだんみなさんが聞いたことがないようなレアな地域のワインを取り寄せてみてください。きっと、驚くような出会いがあるはずです。
フランスでしたら、ジュラ地方。ここは、しっかりとしたシャルドネも育ちますが、サヴァニャン という地元のブドウ品種も多く作られています。シェリーのような、いくぶん酸化したニュアンスのワインもあり、奥が深い産地なんです。

イタリアのフリウーリ=ヴェネツィア・ジュリア州 は、フリウラーノ、リボッラ・ジャッラといった地元品種があり、昔ながらの作り方を踏襲している小さなワイナリーが多いため、個性的な1本に出会える確率がとても高い地域です。
同じくイタリアの、トレンティーノ=アルト・アディジェ州も、独特のワイン文化が残る地域です。トレンティーノの山地では、テロルデゴ・ロタリアーノ という地元品種が生産されています。このブドウから作る赤ワインは、濃厚ながらエレガント、タンニンはチョコレートのようになめらかです。白ワイン の生産量も多く、なかには、沈丁花の花を思わせるようなミステリアスな香りのワインもあります。ぜひ、奇蹟的な出会いを探してみてください。

スペインのバスク地方では、微発泡で、青リンゴのようなフレッシュな香りの白ワイン、チャコリ が親しまれています。以前は地元で消費され、あまり輸出されていませんでしたが、近年日本にも入ってくるようになりました。
また、白ワイン用のブドウを使って、赤ワインを作る製法で作ったオレンジワイン を狙ってみるのも面白いかもしれません。オレンジワインは、アプリコットや紅茶、スパイスなどの独特の風味のあるものが多く、ハマる人が増えていますョ。

ワインを選ぶポイントその4

「金賞」などの言葉にだまされるな!

通販サイトのワインの宣伝でよく見かけるのが、コンクール金賞受賞などの言葉です。とくに、ボルドー金賞。フランスのボルドー地方といえば、1本10万円以上もする5大シャトーやペトリュスなど、錚々たるワインの産地です。そんな高価なワインを差し置いて、ボルドーで金賞を取ったなんて、何てシンデレラなワイン?と思うかもしれませんが、これ、まったく勘違いです…。

ワインコンクールの審査は、外観、香り、味わいなどの数項目について、各○点満点で点数が付けられます。濁り、異臭、雑味などがあると減点です。しかし、著しく傑出した部分があっても、○点以上は付けることができません。これは、科学でいうところの、「天井効果」です。簡単にいうと、いわゆる頭打ちです。
また、出品されたワインは、その時点の香り、味わいで評価されます。このワインが10年後どうなるか…などは、正確に評価することはできませんし、審査でもあまり重要視されません。つまり、出荷されて、すぐ飲んで美味しい、長期の熟成を必要としないワインで、傑出した部分があっても、なくても…、重大な欠点がないものが受賞の対象になりやすいということです。

ボルドー金賞を受賞したワインというのをご覧いただくと、ほとんどがメルローというブドウを使用しているのがわかります。メルローは、早熟で糖度が上がりやすく、豊かな果実味やコク、なめらかさを持つワインを作りやすいという特徴があります。また、メルローは病気にも強く、寒い地域でも栽培しやすいという利点もあります。ボルドーを代表するもう1つのブドウ品種として、カベルネ・ソーヴィニヨンがあります。カベルネ・ソーヴィニヨンは、風味もより繊細で、栽培にも気を使うため、コンクールに出品される数がもともとあまり多くないようです。

以上をまとめると…、ボルドー金賞を受賞したワインのなかには、メルローの豊かな果実味やコク、なめらかさにうまいこと乗っかって、傑出した部分はあまりなくても、すぐ飲んで美味しいんだからいいじゃん!というコンセプトのワインもまあまああるということです。これ、カジュアルに飲むのなら、何も問題はないのです。家飲みでしたら、通常、ワタクシも、そういうワインをとても楽しくいただいております。ですが…、金賞とか、ボルドーとか、そういう「箔を付ける」ような言葉に、若干の違和感を感じますよね…。まあ、受賞したのは事実なんですが…。


お取り寄せワインを選ぶ秘訣について書いてみました。ご参考になりますでしょうか? かなりの愚痴やら、「だまされるな!」という言葉で驚いた方、大変すみません…。「だまされるな!」は、すなわち、ワタクシ、過去にだまされたのよ…、ということの裏返しです。だまされた…といいますか…、正確にいうと、ワタクシが通販サイトのコメントを読んで感じたことと、通販サイトのコメントを書いた人の間で、細かいニュアンスが伝わらなかったということかもしれませんね。言葉って、本当に難しいです…。とくに、感覚的なものを言葉に置き換えるのは、大変難しいですね。医療、介護の現場でも、そうした問題、いろいろ起きているかもしれません。

さて、次回は、平和が戻ってきていることを祈念し、音楽の話題。『あ、今! 演奏家に何かが降りてきた瞬間』と題して書いてみたいと思います。お楽しみに。

>> 前編はこちらから

コメントする