これからの薬剤師の新たな役割

Story04

みなさん、こんにちは。狭間研至です。With Coronaの時代は当面続きそうな気配ですが、今までの常識に縛られず、物事の本質を考えながら行動していくことが大切だと感じる毎日です。医療・介護の現場にあてはめてみれば、多職種連携、情報共有といういわば当然のことを、改めて考え直してみるということが求められるのかも知れません。

手前味噌のようですが、本連載のテーマである医薬協業というものも、まさにそれにあたります。今までは、医師は処方する人、薬剤師は処方箋に基づいて調剤する人というのが今までの医療における枠組み、そしてあり方です。医療と介護がオーバーラップする分野では、医師と看護師、介護士が一体となって患者さんをフォローするなかで、薬剤師はそのチームから出たオーダーに合わせて薬を準備したり、説明したり、お運びしたり、飲みやすくカレンダーやケースに詰めたりといったのが、大半のイメージだったのかも知れません。

しかし、本連載でも触れているように、薬剤師は「薬を渡すまで」のみを担当するのではなく、「薬をのんだ後まで」フォローして、そこで現在の処方内容がその患者さんにとって適しているのかどうかを、薬学的専門性に基づいて考え、医師にフィードバックすることで、薬物治療の質的向上を図ることができます。もちろん、医師や看護師も患者の状態をフォローしているのですが、前回のゾルピデムのお話でもあったように、患者さんの症状を病気によるものと考えてしまいがちです。もちろん、それが合っていることも多いのですが、高齢者で複数の疾患を持ち、場合によっては10剤を越えるような薬剤を服用している場合には、それらの薬によって様々な症状が現れている可能性もあるのです。それを見分ける、そして見破るのは、薬理学・薬物動態学・製剤学といった「薬が身体に入ったあと、どうなるか?」ということについて詳しく学び、国家試験で問われる唯一の国家資格者である薬剤師なのです。

ただ、薬剤師にも、また、医師や看護師、介護士といったスタッフや患者さん・そのご家族にもそのイメージが持ちづらかったため、今まではそういったことを薬剤師さんに御願いしたり、また、逆に薬剤師から服用後のフォローをしたいと持ちかけたりしても、お互いに「いや、結構です」という形になってしまうこともしばしばありました。

一方、2006年からは、薬学教育が6年制になり、より臨床的能力の高い薬剤師を育成することを明確にしたプログラムが始まりました。教育課程では、解剖や生理、病理・病態といった医療に従事するものが共通に知っておくべき知識に加え、患者の状態を知るためのバイタルサインやフィジカルアセスメントの技術も学ぶようになってきました。また、任意であった薬局や病院といった臨床現場での実習も義務化されてきました。最初は、新しい制度導入初期の混乱はあったと思いますが、徐々に馴染んできてその成果が出始めてきました。私が経営する薬局でも、在宅現場に赴くことはもとより、そこで服用後のフォローを行ったり、そこで得た薬学的なアセスメントの結果を臆せず(!)医師に伝えたりといったことは、従来の薬剤師業務の概念が強く残るベテランの薬剤師さんよりは、新卒の薬剤師さんの方がやりやすいように感じることもよくあります(もちろん、例外はありますが)。

さらに、2020年3月には、服用後のフォローや医師へのフィードバックを薬剤師が取り組むべき業務とする改正医薬品医療機器等法が公布され、9月からは施行されています。どちらかといえば、出過ぎたまねのようにも思われていた業務が法律で定められたというのは、新型コロナウイルス感染症とは関係のないラインで進んでいた話ですが、今の時期に偶然か、必然か合った形で興味深いと思います。

次回は、薬局・薬剤師の新たな形が、新型コロナウイルス感染症と共存する、いわばウィズコロナの時代にどのような影響を及ぼすのか、考えてみたいと思います。

「医薬協業という新・し・い ツ・ナ・ガ・リ 04」への1件のフィードバック

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