with corona時代の新しい医師と薬剤師の協業

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みなさん、こんにちは。狭間研至です。薬剤師のあり方が、「お薬をお渡しするまでではなく、服用後までフォローする」ということに変われば、薬局は「地域における薬物治療を支援する拠点」ということになります。今までは、薬剤師と言えば、医師の処方箋通りに薬を渡す人、薬局と言えば、病院の近くで薬を備蓄してある場所だったことを考えれば、大転換、まさにパラダイムシフトが起こっていると言えます。

このような変化は、前回でも触れたように以前からありました。1つは、薬学教育が6年制になったことです。医療専門職の教育課程が変わるということは、その結果である薬剤師のあり方も従来とは異ならなければなりません。4年から6年に1.5倍になったという時間的なことだけではなく、6年制移行への議論が、薬物治療が高度化する中で、薬剤師がもっと臨床的な業務に取り組んで行くことを目標にして行われてきたことを考えれば、当然のことだと言えるでしょう。

また、2015年10月に厚生労働省から示された「患者のための薬局ビジョン」では、薬局は門前からかかりつけ、そして地域へ移っていくこととともに、薬剤師の仕事は対物業務から対人業務にシフトするべきだということも明記されました。このことに伴い、2018年、2020年度の調剤報酬改定では、薬を準備してお渡しする間でのところのコストは低減され、それが服用後のフォローに振り分けていく方向性が示されました。

さらに、2020年9月に施行された改正医薬品医療機器等法においては、薬剤師の服用後のフォローは必要に応じて義務化され、そこで得られた情報を医師にフィードバックすることは努力義務とされました。まさに、薬剤師のあり方が変わるということは既定路線となり法律にもなっているわけですが、医師と薬剤師の関わりも、単に処方を出す人、処方箋に応じて薬を渡す人という観点から変わろうとしていたのだと思います。

一方、新型コロナウイルス感染症によって、患者さんの受療行動が変わりました。医療機関の待合が三密の代表となり、基礎疾患をお持ちの方や感染のリスクが高い高齢者は医療機関への受診を控えるようになりました。しかし、薬は必要であると言う問題を解決するために、2020年4月10日の事務連絡において、電話等を用いた診察および、処方箋を患者が希望する薬局へFAXすることが時限的・特例的に解禁されました。それとともに、薬局ではFAXで送られてきた処方箋データをもとに調剤し、服薬指導も電話等で行うことも、時限的・特例的に解禁されています。これは、with coronaの時代が遷延するとともに、若干の要件変更はあるものの、基本的に恒久化の流れで議論されています。このことは、患者さんの自宅→医療機関→薬局→自宅という受療行動が変わることになり、医師も薬剤師も日常業務のあり方に変化を迫られることになっています。

このことによる一番の変化は、医師との接点が今までよりも回数は減少し、濃度は薄まってくるということだと思います。従来は2週間に1度は通っていて医師の診察を受けてきた方も、月に1回とか2ヶ月に1回という風に変わってきます。また、もし診察を受けるとしても、感染を恐れてそそくさと帰ってしまうことも増えているのではないかと思います。このことによって、感染のリスクは下げられるかも知れませんが、患者さんの不安は増大している可能性があります。そんなときに、薬をお渡しする間でではなく、服用後までフォローし、そこで得た薬学的アセスメントを医師にフィードバックするということを行ってくれる薬剤師は、患者の不安を軽減してくれる人として認識されるようになります。また、医師の処方箋に頼らずとも、薬剤師のアドバイスも受けながら自分で一般用医薬品を購入して症状の緩和を図る人も出てくるでしょう。一般用医薬品も販売後に、薬剤師がフォロー・アセスメントし、想定通りの効果が得られない時には、他の疾患の可能性も考えて、医師へそれまでの情報を添えて受診勧奨を行う必要があります。

つまり、with corona時代の新しい医師と薬剤師の協業の形が、浮き彫りになっていくのではないでしょうか。

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