259. 文化の日に思うこと-幸せの所在地

ラファエロ画『オリュンポス十二神』です。
ギリシア神話において、オリンポス山の山頂に住むと伝えられる
12柱の神々が描かれています。
主神ゼウスをはじめとする男女6柱ずつの神々です。
ゼウス, ゼウスの妻ヘラ, ゼウスの娘アテナ, アポロン, アプロディテ, アレス, アルテミス, デメテル, ヘパイストス, ヘルメス, ポセイドン, ヘスティア
これらの神々はいろんな作品のモチーフになっていますから
聞いたことのある名前も多いことでしょう。

ある時、そんなオリンポスの神々が集まり、
「幸せの秘訣をどこに隠したら、人間がそれを見つけたときにもっとも感激するか」を
話し合ったそうです。
「高い山が良いだろう」、
「いや、深い海の底だ」、
「それよりも地中深く埋めるのがいい」と様々な意見が出たそうです。

皆さんなら何処が良いと考えますか?
最高権力者の椅子とか、
巨万の富などという声も聞こえてきそうです。
今なら、「月の裏側」とか「銀河の果て」などという
宇宙規模の場所を主張する人も出てくるのかもしれません。

そんな中、ある神が
「人間の心の奥深いところに隠すのが一番だ」と言いました。
すると、全員がその意見に賛成したそうです。

幸せは高い山の頂や海底、地中などの目につかないところにあるのではなく、
誰もがその気にさえなれば行き来できる各自の心の中に、
所在しているということになります。
古代の寓話かもしれませんが、まさしく真理でしょう。
全ての神々が承服したというのも納得できます。
ただ、実際には心の一番深いところに隠される訳ですから、
それを見出すことは簡単ではありません。
ましてや、多くの人は幸せを外に求めてしまうことが多いので、
それには発想の転換が必要です。

本当の幸せは、「自分がどう見られているか」という他人の評価、
すなわち他人の心の中に所在するのではなく、
自分自身の心の中に、紛れも無く所在しているのだと心定めるべきでしょう。
まずは、そう腹をくくることが重要なのだと思いました。

人生の成功を求めて我武者羅に歩む登山の時期があっても良いと思います。
特に若いうちはいろんなことにチャレンジすべきでしょう。
しかし、ある程度の年齢に達したら、
それだけではいけないと思います。
そうした心のあり方は、幸せを外に求めがちだからです。
別の生き方を見つけなければいけないのだと思います。
そう、五木寛之さんの「下山の思想」のように
人生を振り返り、集大成のまとめをしていくべきです。
「見事に下山する。安全に、そして優雅に」
その態度は、自ずと幸せを自らの心の中に求めることにつながっていくはずです。

私は社会人スタート時に、この人生で社会貢献の足跡を遺すと決意しました。
その戦略は自己犠牲を払って社会貢献をしていくというものでした。
ずっと歩んできましたが、その戦略にはどこか無理があって、
行き詰まりを感じていました。
志さえあれば、少なからず足跡は遺せるだろうとタカをくくっていましたが、
五十を過ぎても芽が出ず、焦りさえも感じ始めていました。
先日、師との心の対話の中で、ある意識の変革が生まれました。
「自分が充足していて幸せでなければ、他人に社会に好影響は及ぼせない」と学びました。
私のこれまでの歩みはある意味、虚勢であり、
トルストイの告白のように他者からの承認欲求だったともいえます。
*トルストイのエピソードについては第140話(後半)をどうぞ。

140. マズローの欲求階層説とトルストイ

やせ我慢はせずに、
自分の気持ちに正直でありたいと思うようになりました。
「幸せは人間の心の奥深いところに隠されている」のですから…。

そして、日々の生活を出来るだけ丁寧にしていこうと考えています。

2021年11月3日

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