凄い本が出版されました。
大学院時代の恩師で、今も尊敬して止まない田坂広志氏の新著、
『死は存在しない』です。
「最先端量子科学が示す新たな仮説」という副題が付いていることで
怪しいオカルト本ではないことが分かります。
勿論、著者名で区別が付く筈ですが…。

メルマガのリードに「もはや、本というより宣言!」と書きました。
宣言といえば、マルクス、エンゲルスによる『共産党宣言』が思い浮かびますが、
それに匹敵するくらいのインパクトがあると思います。
少なくとも私にとっては…。
想定外の内容だっただけに咀嚼できていない部分もありますが、
長年の疑問が氷解したことで
興奮冷めやらぬ状態で書いています。

死は誰にとっても謎でしょう?
臨死体験者は完全な死人ではないため、
死について実体験を話せる人はいない訳です。
それでも、多くの先人たちが死への探求を続けてきました。
が、全て未完に終わっています。
その主たる役割は宗教家に委ねられてきましたが、
宗派によって見解はまちまちで
誰もが認める真理には到達していません。
今回著者は、科学と宗教の架け橋になるとの自覚のもと、
両方のアプローチから死を探求し、
その上で、深い意味での「死は存在しない」と宣言しています。
なんと、大胆な宣言でしょう!
書名を見て、「えっ!?」と思われた方も多いはずです。
特にこれまでの著者の愛読者であれば尚更でしょう。
副題には「最先端量子科学が示す新たな仮説」とあります。
原子力工学を修めたバリバリの理系人間が、
宗教をも含めたリベラルアーツの叡智を総動員した時に初めて
このような洞察が可能になったのでしょう。
まさにサイエンスとアートの統合です。

本書の「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」を
田坂氏が唱えているという理由で
私が受け入れているのではありません。
鵜呑みにしている訳ではありません。

田坂氏ほどではありませんが、
私にも不思議な体験があります。
それなりに天の訓練を受けてきたという感覚があるのです。
そして、死後、私たちの魂は一つになっていくという感覚をずっと持ってきました。
所謂、「Oneness」「全一性」の思想です。
ただ、そうした感覚を心に抱いているだけで
言語化できずにいました。
今回、それが詳にされたのですから
興奮しない訳がありません。

これまでの私自身の問題意識と本書の指摘によって
「死とは何か」「私とは何か」「人生の意味」「宇宙はなぜ存在するのか」云々、
この世界、人生におけるさまざまな疑問が氷解していくのを感じました。
幾何学問題の補助線を得たような感覚です。

以下、備忘録的な本文からの抜粋です。
(特に、第七話以下が圧巻でした)

  • その「神」や「仏」や「天」とは、「ゼロ・ポイント・フィールド」にほかならない(P.189)
  • 肉体の死後、我々の意識は、その中心をゼロ・ポイント・フィールド内の「深層自己」に移し、生き続けていく(P.210)
  • 情報をゼロ・ポイント・フィールドが記憶している(P.214)
  • フィールド内で我々の「自我」(エゴ)は消えていく(P.222)
  • 「自我」が消えていくに従い、すべての「苦しみ」も消えていく(P.232)
  • 「真の私」というものが、「自我」に拘束されたこの「現実世界の私」や「個的意識としての私」ではないことに気がついたとき、「死」というものが、本来、存在しないということの意味を、理解することができるのである(P.232)
  • この宇宙が「私」を通して発する「一三八億年の問い」(P.307)
  • 「私」とは、「宇宙意識」そのものであった(P.313)

驚きの連続です。
特に「肉体の死後、「自我」(エゴ)が消え、全ての苦しみも消えていく」という指摘は、
私にとって何よりの救済になりました。
また、「自我」の先にある「真の私」について深く見つめていこうと思いました。
ただ、これだけでは本書の真意が掴めないと思います。
ぜひ、本書を手に取ってみてください。
帯に書かれているように
「人生が変わる一冊」となることでしょう。

これほど重厚で深淵な内容にもかかわらず、
新書出版であることに
当初、疑問を持ちました。
思慮深い著者のことですから、
豪華装丁の単行本にしなかったことにも意味がある筈です。
より多くの人に問題提起をするという意図があったのかもしれません。
そうに違いありません。

となれば、さらに内容を深めた永久保存版の豪華装丁本が
今後、出版されるに違いない!
などと勝手に思い込んでいます。

そんな考えに浸りながら、北叟笑んでしまう私でした。

(2022年10月26日 )

「310 『死は存在しない』書評」への1件のフィードバック

  1. 全く同感の一言です。私は確率的に有りもしないことを起こして極身内だった人がその存在を知らせているという認識にたっています。

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