常にアメリカ名作映画ランキングの上位に取り上げられる不朽の名作です。
アメリカでは毎年クリスマスの時期にTV放映されるのが定番となり、
世代を超えて親しまれているそうです。
今や、公開から50年が経過しているためパブリックドメインとなっています。
本作が不朽の名作となった理由の一つに
主演のジェームズ・スチュワートの存在があると思います。
主人公のジョージ・ベイリーは、実際の彼の実直な生き方と重なります。
完全なハマり役といえるでしょう。
ここで俳優ジェームズ・スチュワートに言及しておきます。
1908年5月20日生まれで
1997年7月2日に89歳で亡くなっています。
身長は191cmありました。
映画の画面からも誠実な人柄が伝わってきます。
実生活でも真面目で、
日々、絶世の美女たちと仕事をしていながらゴシップとは無縁で
生涯、妻のグロリアと睦まじく生活したようです。
既に『スミス都へ行く』（1939年）主演によってスターとなっていましたが、
第二次世界大戦が始まると
自ら軍に志願し、爆撃機パイロットとして活躍しました。
1945年に大佐、1959年には空軍准将に昇進しています。
1968年に退役し、その後少将に昇進しています。
この間も俳優として年2本ほどの映画出演もしています。
軍隊生活をしながら俳優業を継続していたことになります。
どちらに比重を置いていたのかは不明ですが、
勇敢な人でもあったようです。
出演作でも
日々の生活で困難に立ち向かう「平均的な中流階級のアメリカ人」の善良な役柄が多く、
「アメリカの良心」と呼ばれていました。
また、頭脳明晰でもあった様です。
プリンストン大学で建築学と都市工学を学んでいます。
これは「素晴らしき哉、人生！」の主人公ジョージが
父親の急死によって家業を継ぐ前の
大学で建築学を学び、都市計画に関わる建築家になるという夢と同じです。
結局、ジョージは自身の夢は断念し家業を継ぎます。
海外旅行と大学進学のために貯めていたお金で
弟を大学に進学させました。
家業は貧しい人々のために宅地開発を行い、安価な住宅を提供する仕事でした。
ジョージの仕事ぶりは素晴らしく、
多くの人たちに自宅を持たせ、たくさんの幸せをもたらしました。
ところが、ある事件が元で、
そのベイリーはクリスマスの夜、絶望の淵に陥ってしまいます。
自死を決行しようとする直前に
二級天使のクラレンスが現れます。
この天使は二級だけあって、一般のイメージとはだいぶ違っています。
中年のおじさん風で、愛嬌があります。
クラレンスによって、ベイリーの人生の振り返りが行われます。
というよりベイリーが存在しなかった世界を見せられます。
常に善良な人生の選択をしてきたベイリーが存在しなかった世界では、
多くの人が不幸な人生を送っていました。
自分の人生が多くの人たちに幸せをもたらし、
自身にとっても素晴らしいものだったことに気づいたベイリーは生まれ変わります。
人生の解釈を変えたのです。
ベイリーが大喜びで家に帰ってみると、
状況は一変していました。
良妻賢母の妻、メアリーの呼びかけで、
多くの人が救済の手を差し伸べて事態は解決していました。
ベイリーと家族、賛同者たちは
事件が起こる前、以上に幸せを実感しながら
クリスマスの夜を祝いました。
最後の「蛍の光」の合唱が印象的でした。
映画はフィクションではありますが、
私は一つの教訓を得ました。
ハッピーエンドになるための大きな転換点があったと思います。
それは、クラレンスとのやり取りの中でベイリーが人生の解釈を変えた点です。
もっと正確に言えば、
人生の解釈を変えて大喜びの心情で家に帰ったところにあると思います。
パラレルワールドをご存知でしょうか？
映画「マトリックス」でも取り上げられた世界です。
観察者がいる世界から、過去のある時点で分岐して併存するとされる世界が
無数に存在するかもしれないと現代物理学では議論されています。
現実世界は、観測者の意識によって初めて決するという量子力学の考え方です。
「シュレーディンガーの猫」の例えといえば、ピンとくると思います。
ベイリーが人生の解釈を変えないまま（自殺せずに）帰宅した場合、
状況は変わっていなかったかもしれません。
実際、ベイリーは自分の人生に感謝し、大喜びでその状況を受け入れました。
その意識が現実世界を決した（変えた）のかもしれません。
一般的な願望実現とは違う意味での祈りの効用があるような気がしています。
第312話で書きましたが、
MED 2022の特別トークセッションで岡田武史さんが感謝、祈りの体験を話され、
順当であれば、田坂広志さんから深い話が聞けたはずでした。
が、私が進行を急ぐあまり話題を変えてしまいました（大反省）。
48分過ぎです。
最後に、耳寄りな情報です。
NHK BSプレミアムで本作が放映されます。
2022年12月22日（木）午後1時00分〜3時12分
https://www.nhk.or.jp/bscinema/calendar.html
Amazon Prime Videoでも視聴できます。
なお、ウィル・スミス主演の「素晴らしきかな、人生」ではありませんのでご注意ください。
（本作のリメイク版？）
ぜひ、ご鑑賞ください。
クリスマスに最も相応しい映画だと思います。
できましたら、皆さんのご感想も聞かせてください。
（2022年12月21日）