296. 能鑑賞「武田宗典之会」

5年ほど前から能を習っています。
師匠は、観世流シテ方の武田宗典 氏です。
今回、年に1度の師匠の主演舞台を観てまいりました。
舞台は東京銀座・GINZA SIX地下3階にある観世能楽堂です。
銀座の華やかさとは打って変わって
地下3階には静寂な雰囲気があります。
師匠が舞台に現れた瞬間から
その場がさらに研ぎ澄まされていくのを感じました。
真摯な表情、見事な立ち姿には荘厳さがありました。

元々、芸の完成度の高さには定評のある師匠ですが、
今回の舞の素晴らしさには特に感動しました。
アスリート並みの激しい動きの直後に謡があったりします。
それを息切れもせずに
こなせていたのは、日頃の稽古の賜物なのでしょう。
これまでたくさんの能楽師の舞台を見てきましたが、
師匠の舞台はどこか違うのです(弟子の贔屓目ではないと思います)。
今回、その理由がわかったような気がしました。

それは、体幹の強さです。

能舞台は撮影が許されませんので、
当日の映像はお伝えできません。
それでも、別の下記動画で私の言いたいことが幾分かは伝わるかと思います。
一挙手一投足の動きがピタッと決まっていて
身体の軸が全くブレないのを感じ取ってください。


以前、師匠にどんなトレーニングをされているかを伺ったことがあります。
スポーツ選手のように何らかの筋力トレーニングをされていると予想していました。
しかし、答えは意外なものでした。
筋力アップのトレーニングはしないそうです。
必要のない筋力を鍛えたところで全く意味はなく、
芸の向上にはつながらないのでしょう。
結局、能の動きを繰り返し行うことが最良の稽古になるとのことでした。
とても大切なことを教えていただいたと思います。
以前、大リーガーのイチロー選手も
同じようなことを言っていたのを思い出しました。

能の動きはゆっくりで滑らかなものです。
それを反復することで鍛えられるのは
体幹の筋肉、所謂、深層筋です。
それによって初めて、あの安定感が生まれるのでしょう。
能は歌舞伎と違って、一般人も習うことができますので、
鑑賞だけではなく体験もできるのです。
観ても良し、やっても良しということです。

能の大成者である世阿弥はこんな言葉を遺しています。

「そもそも芸能とは諸人の心を和らげて上下の感を為さんこと、寿福増長の基、遐齢(かれい)延年の法なるべし」(『風姿花伝』)

「能は健康長寿をもたらす」と言っています。
能が600年以上続いてきた理由でもあるでしょう。

健康長寿と言えば、
私たちが提唱しているメディカルウォーキング(医歩)もそれを目指しています。
医歩も体幹の強さを意識しています。
一般的な洋式歩行と能からヒントを得た和式歩行を取り入れています。
前者では筋トレで鍛えられる表層筋が主に働き、
後者では身体の安定感を生み出す深層筋が主に働いています。
両方のトレーニングをすることで
健康寿命が延伸すると予想しています。
以前にも案内しましたが、
医歩の動画DVDが完成しました。

ぜひ体験してみてください。ご注文はこちらからどうぞ!

さて、本題に戻りましょう。
本日、言いたかったことは
「医歩のDVDを購入してください」ではありません。

素晴らしい能舞台を是非ご覧になってください。

これが本日のメッセージです。
特に我が師匠、武田宗典氏の舞台がお薦めです。

能の世界は本当に奥深いと思います。
最近になってようやくわかってきたように思います。
能楽堂の研ぎ澄まされた空気感も
ぜひ体験していただきたいです。

それでは、能楽堂でお会いしましょう!!

(2022年7月20日) 

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