このメルマガも300号を迎えました。
記念となる本号は特別なものを書きたいと意気込みましたが、
例に漏れず、締め切りギリギリになってしまいました。
咄嗟に思いついたのが、ミチオ・カク博士著『神の方程式』です。
最近、知ったのですが、彼は「ひも理論」の創始者の一人で、
分かりやすい科学解説書を書くことでも有名な理論物理学者です。

ニューヨーク市立大学理論物理学教授。ハーヴァード大学卒業後、カリフォルニア大学バークリー校で博士号取得。「ひもの場の理論」の創始者の一人。『アインシュタインを超える』(講談社)、『パラレルワールド』『サイエンス・インポッシブル』『2100 年の科学ライフ』『フューチャー・オブ・マインド』『人類、宇宙に住む』(以上、NHK 出版)などの著書がベストセラーとなり、『パラレルワールド(Parallel Worlds)』はサミュエル・ジョンソン賞候補作。『フューチャー・オブ・マインド(The Future of the Mind)』 は『ニューヨーク・タイムズ』ベストセラー1 位に輝く。BBC やディスカバリー・チャンネルなど数々のテレビ科学番組に出演するほか、全米ラジオ科学番組の司会者も務める。最新の科学を一般読者や視聴者にわかりやすく情熱的に伝える著者の力量は高く評価されている。

未完ではありますが「万物の理論:Theory of Everything」を
アインシュタインは統一場理論と呼びました。
人類が2000年に亘って続けてきたその研究の歴史が分かりやすく解説されています。
統一場理論とは、重力、電気力、強い核力、弱い核力の四つを統一する究極の理論です。
その理論を表すシンプルでエレガントな方程式を人類は探し求めてきたのです。
本書によってこれまで断片的で不連続だった私の物理知識もかなり整理されました。
統一場理論に関してフリーマン・ダイソンの言葉が印象的です。
「統一場理論には、失敗に終わった挑戦の屍が散らばっている…」
数多くの英才達が挑んできた最重要イシューと言えるでしょう。
業績を遺した偉人達の名と用語を備忘録的に列記してみましょう。

  • ヨハネス・ケプラー:天体の運行法則
  • ジョルダーノ・ブルーノ、ガリレオ・ガリレイ:地動説
  • アイザック・ニュートン:万有引力
  • マイケル・ファラデー:電磁場の基礎理論
  • ジェームズ・クラーク・マクスウェル:マクスウェル方程式 光の理論
  • グリエルモ・マルコーニ:無線
  • ウィリアム・ハーシェル:赤外線放射
  • ドミトリー・メンデレーエフ:元素周期表
  • マリー・キュリー、ピエール・キュリー:放射線
  • マックス・プランク:プランク定数
  • エルヴィン・シュレーディンガー:シュレーディンガー方程式(波動関数)
  • ポール・ディラック:ディラック方程式(電子理論)、スピン
  • ヴェルナー・ハイゼンベルグ:不確定性原理
  • ニールス・ボーア:コペンハーゲン解釈
  • マレー・ゲルマン:クォーク
  • 量子電磁力学(QED):光と電子の量子論
  • チェンニン・ヤン&ロバート・L・ミルズ:ヤン・ミルズ場
  • 対称性-ヒッグス・ボゾン粒子-対称性のみだれ
  • 標準模型
  • 宇宙の物質とエネルギー=ダークエネルギー68.3%+ダークマター26.8% +その他4.9%

こうした歴史を振り返ってみますと
ニュートンの業績は燦然と輝いて見えます。
アインシュタインも同様です。
そのアインシュタインは、ニュートンの万有引力は錯覚でしかないと断言します。

「物体が動くのは、重力や遠心力で引っ張られるからではなく、
周囲の空間の湾曲によって押されるからなのである。」
「重力が引っ張るのではなく、空間が押すのである。」

この意味が分かるようなら一般相対性理論の本質を掴んだと言えるでしょう。
その後の量子力学のレベルまでなら何とか私も付いていけたのですが、
「ひも理論」はやはり理解不能でした。
ミチオ・カク博士の最も分かりやすいとされる言説を以ってしてでもです。
「ヤン=ミルズ場」「10・11次元」、「M理論」は
私の許容範囲を完全に超えていました。
何と、私たちの世界は11次元かもしれないというのです。
というより11次元と解釈した方が
辻褄が合うというから驚きです。

最後の章は究極の理論の意味、宇宙の意味など、
科学の領域を超えるところまで踏み込んで語られています。

神には「宗教的な人格神」と「スピノザの神」の2種類があります。
後者は、美しく単純でエレガントな宇宙における秩序の神です。
そんな後者の神の存在可能性については物理定数に見ることができます。
第251話で言及しました。

ある意味、後者の神が宇宙創世にあたって、
宇宙そのもの、神自身を解明する知性体を創造したように思われます。
神が、己自身を知るために始めた悠久の旅路なのかもしれません。
人間は知性を頼りに、万物の理論、神の方程式に近づこうとしてきました。
そんな人間には「スピノザの神」の意志が潜在していると思えてなりません。
旧約聖書の神、ヤハウェが「あってある者」と名乗ったのもわかる気がします。

そんなことを考えていたら、
大学院時代の恩師に教えていただいた言葉が頭に浮かびました。

「私が存在しているのではない。存在が私をしているのである」

この意味、解りますでしょうか?

(2022年8月17日)

コメントする